飛ばない蝶は、花束の中に


お兄ちゃんは。

私の言った事なんか、聞かなかったかのように、私に話し掛けた。

引っ越した後のこと、学校のこと、私のママのこと。



お兄ちゃんは毎年、私の誕生日に、カードを贈ってくれていたけれど。

ドイツ語で書かれたメッセージは、いつも小さい子に書くような内容だった。



つまりは、そういう事なのかも知れない。





「お帰りなさい」


にこやかに出迎えた“雅”の顔色は、良くなっていた。


お兄ちゃんは、砂っぽい服を軽くはたくと、“雅”の髪に、少し触れる。



「雅、コーヒー」

「はい」


ごくごく素直に、嬉しそうに返事をする“雅”が、深雪ちゃ…深雪さん、は何がいい?と。


1日ひとりで居させられた事なんか、気にもしていないかのように、訊いた。




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