飛ばない蝶は、花束の中に


「ああっ…砂…!!」


廊下に流れた、海の砂。

お兄ちゃんの靴下にでも付いていたのか、ざらざらと音を立てて こぼれた。



「ちょっ…凱司さん!ここで脱いでください!」

「………あー」

「あーじゃないですよぅ…!」



靴下を脱がそうとでも言うのか、床に膝をついた“雅”は、お兄ちゃんの裾をクルリと折り返すと、はたと手を止めた。




「……あー……っと…じ…自分で脱いでください…?」


一番下から、大きく見上げた“雅”は、語尾に疑問符を付けたかのような発音をすると、気まずそうに目を泳がせた。



「……いつもみたいに…しなさいよ」



きっと、いつもこうなんだ。

きっと、私が居ないときは、こうやって。



「私に気を使わなくてもいいし、変に気遣われると、不愉快だわ」




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