飛ばない蝶は、花束の中に


「………………」


“雅”は、じっと私を見つめる。
私も“雅”を見つめる。

睨みつけるように。




「…おい?」


再び足首を掴まれたお兄ちゃんは、半ば引きつったような表情で私たちを見比べると、足を引いた。




「……………」

「………なによ」

「…いいえ」



ふ、と。

“雅”の唇に、笑みが浮かぶ。


私から視線を外した“雅”は、引かれても掴んだままだったお兄ちゃんの足首に、指をかけた。



「凱司さん、コーヒー淹れておくので、先にお風呂お願いしますね」

沸かしてありますから、たまには湯船で温まってください。

にこり、と。



靴下を器用に脱がし、砂が落ちないように丸めながら見上げて。

お兄ちゃんの顔を、ひきつらせた。




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