飛ばない蝶は、花束の中に
正直なところ。
“雅”が、私を抱き締めるように引き剥がした時。
ひどく…なんというか。
…守られた、気がした。
私が“タカノ”をひっぱたいたから、ではなく。
それよりも早く、“雅”はキッチンから飛び出したように、見えたんだ。
なだめるように、私を優しく座らせて、ミルクティと、レーズンのたくさん入った薄切りのパンをひと切れ置いてくれた“雅”は。
私がまるで怖がっているかのように。
お兄ちゃんのコーヒーを注ぎ忘れ、それをお兄ちゃんが自分で注ぐのも目に入らないかのように。
あんまり驚いて黙り込んだ私の首に、冷たいジェルを塗り続けて、いた。