I got a love!?~私が恋に落ちたら~
accident

「まちこー!ごめんだけど、
ジャガイモ買ってきてくれないねぇ?」




「えー!」





「ジャガイモ抜きの肉じゃが食べさせるわけにはいかないさ!!!」




顔の前で手を合わせて懇願するお母さんにため息が出る。





作る前に材料の確認くらいしとけばいいのに。
しかもメインのジャガイモを忘れる?



お母さんのおっちょこちょいなんて
今に始まったことではないんだけどね。



「分かったよー。」


「助かるさぁ、二袋ね!」


「はぁい。」


身支度をして、家を出た。





冷たい風が頬を撫でる。
もう11月も半ば。
いくら沖縄と言えど、羽織るものがないと寒い。




というか、風があるから体感温度がスッゴい低いわけ。


私は手を擦りながら近くのスーパーへ向かった。




と、その時。

ギャンギャンギャンギャン!!!!




けたたましく吠える犬の声が聞こえた。



「おわーー!」

同時に男の叫び声、と...。

私は気になって、声のする方へと足を運んだ。




「...っ痛!オマエ....コラー!!!」

フーッ!フーッ!



「お手!!お座りでもいいから!!」


なんだそりゃ。
お座りでもいいからって何よ?


ギャンギャン!!フーッ!



長い雑草の生い茂る空き地だった。
フェンスの向こう側に、
でっかい犬が、男子生徒の上に馬乗りになって...
......格闘中?




何これ。何してんの?



と、私がポカーンと立っていると、
男子生徒と目が合った。

「あんた!そんなとこ立ってないで、そっちにある首輪取って渡して!」




ハッと我に返った私は、落ちている手綱の着いた首輪を取って男子生徒に投げて寄越した。




すると、男子生徒は手際よくその犬に首輪をつけてしまった。





「ハァー。やっぱお手はまだまだか...」

疲れて地面に腰を下ろしている男子生徒に、犬がじゃれている。





もはや遊ぶ気力も残っていないのか、手綱を持った彼は舐められても寄り掛かられてもされるがままだった。




「助かったよ。ありがとな。」

彼はボリボリ頭を掻いて謝礼の言葉を述べた。

「何してたんですか?」





「しつけの成果を試そうと思って。首輪外した瞬間、これだよ。」

彼はエヘヘ、と苦笑いしながらそう答えた。





短く刈った黒髪。
浅黒の肌が真っ白な制服を一層白く引き立てている。

澄んだ瞳を湛えた二重に
スッと通った鼻筋
シャープな顎のライン━━

この人はイケメン、の部類なのだと思った。




その端正な顔に気をとられているのも束の間、なんだか変な臭いがしてきた。




「なんか...匂わない?」

「え!」
彼はスンスン、と鼻を動かした。

辺りを見回すと。




そこには、何者かによって与えられた力で、変形しているウ◯コの姿があった。




とにかく、状況の理解に時間はかからなかった。




彼はまさかだろ、といいつつ、ひきつった顔で祈るように自分の靴の裏を見た。



「...」

「...」

祈りは聞き届けられなかったみたい。

「嘘だろ。」

「あ、あーあ。やっちゃったね。ドンマイ。」




言いながら視線を斜め上に反らして距離をとりはじめる私。




「え...ちょっと待って。これどうすんの。てか、なんで後ずさってんの。」

涙目の彼が一歩、私に近づく。
私は二歩、後ずさる。

「俺をこのまま放置するのか!?」

彼が私に手を伸ばしながら、
二歩、近づく。
私は六歩、後ずさった。

「だって、救いよう、ないし。」

間違っていない。
私は絶対に間違ってない。

「いやいや!あるって!踏めよ!おまえも!」

へ?この子、なにいってるの?

「ほら、この場合、おまえも踏んだらさ、俺と対等な立場になるじゃん。」




な、だから踏めよと言わんばかりに距離を詰めてくるソイツ。

「は、意味分からんし!」

じりじりとわけの分からない攻防戦が続く。




私が今走り出すと、確実にこいつも走って追ってくる。



そのまま走り出すのでは不利かもしれない。

だから...少々古いけど....




「あ!UFO!!」

「えっドコドコ!!?」

「あっちだよ、ちゃんと見ないとわからんよ~!」



私はくるりと向きを変え、意を決して駆け出した。




あーー!逃げやがってえええ!!
という言葉を背に受けながら。




私が会った人はイケメンだった。
確かにイケメンだった...





それも残念イケメンだった。


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