暗黒の頂の向こうへ
広島長崎に原子爆弾を投下し、多くの人の命を奪い、核の愚かさを学んだ。 しかしその体験を生かす事ができず、人類は再び核を使い、世界は滅んでしまった!!!
我々と同じ血を引く日本人が、もっと世界に発信し、心に訴えれば人類は滅ばずに済んだのかもしれない。
今この時代の広島と長崎が、核の原点である。
愚かな人間に、そして歴史上世界を牛耳っているアメリカ人に、
広島の原爆投下は核の加害者と思わせ、長崎の原爆をアメリカ人の頭上に落とし、核の被害者と後悔させなければ、時代は動かない。 我々は世界を守る為に、聖戦を歴史に挑んでいる! この野望を踏みにじる者は、全身全霊で排除する。
それがたとえ、未来の私だとしても!」
守は反論する事ができなかった。
「この青年を、どうするつもりだ……?」
「妹を助ける為に、子供たちを守る為に、未来を切り開く為に、自らが歴史を変える運命を選んだのだ」
「それは、本当か……?」
青年は首を、小さく縦に振った。
「君と子供たちの運命は、歴史上すでに決まっている。
歴史を変える事は、不可能に近い程難しい。 だが男は愛する人を守る為に生きている。 試された命で、運命を変えてみろ。 もし失敗した時は、子供たちの所へ連れて行ってやる。 俺は、未来の警察官だ。 最後は俺に任せろ」
「ありがとうございます……。 その時はお願いします」
「優一君。 時間だ。 猶予はない。 核の歴史に案内しよう」
青年は洗脳に屈し、謎の男と時空の歪みに姿を消して行った。
その姿を見送る守は、胸が締め付けられる程複雑な心境であった。 まだ二十歳にも満たない青年が、妹や子供たちを守る為に命を賭ける。 全く経験をしたことのない時空に侵入し、テログループですら成し得ない歴史の変更に挑む!!!
青年の過酷な人生に、自分の人生を重ね合わせた。
そして、時間の止まった仮想空間にいる子供たちを見つめ、時空の扉を悲しそうに開いた。
テログループと青年は、二度目の原爆投下を準備しているアメリカ軍のテニアン島基地に侵入していた。
テログループのリーダーは思考する。 今までのように直接B29に時空侵入するより、時空警察の監視を避け、乗組員に成りすまし、原爆投下を試みる方が成功するのではないか? そして、青年に重要装置を持たせ、乗組員の自由を奪う事を。
運命の日、太陽が眩しくテニアン島基地の滑走路脇を昇る。
刻々とB29爆撃機ボックスカーの離陸時刻が迫っている。
機上準備を終えた最後の乗組員の背後に、テログループの数人が音を立てず忍び寄った。 その瞬間、乗組員は静かに床に倒れ込んだ。 手際よく死体を隠す。 顔のコピーを撮り、青年の顔を変装させる。 光学迷彩での変装は時空警察に探知されてしまう為、偽装マスクでの変装に拘った。
「奇跡を起こさなければ、妹を助ける事はできない。 優一君。 見事、妹を助けてみろ」
青年は何も答えず、目を閉じ集中している。
その青年の顔に、出来上がった偽装マスクを被せ、胸元に重要装置を取り付けた。
「B29が離陸し、暫くすると沖縄に駐留しているアメリカ艦隊の近くを飛行する。 その時に、今から君に渡す指示書を出せ。 その指示に従い行動すれば、明るい未来は開かれる……」
青年は滑走路へと続く、静かな廊下を進む。
足が震える! 一歩一歩の足どりが重い。
今までの人生が蘇り、妹との会話が心に響きこだまする。
薄明かりの向こうに鋼鉄の扉、運命の扉が見える。
謎の男が指差した。
「新しい未来への扉は用意した。 開けるのは、君だ」
妹の為に、重たい鉄の扉に手を掛ける。 目を閉じて、ゆっくりと祈祈った。
「神様がいるなら、力を貸して下さい。 幸子。 絶対に帰る」
けたたましくエンジン音が響く!
決意した先へ、B29に乗り込むために滑走路を歩く。 心臓の鼓動が頭を叩く! 歩く姿を見つめる作業員の視線が怖い。 呼吸が次第に荒くなる。
子供たちの命を奪うB29爆撃機の真下で、悪魔の機体を恐る恐る見上げた。 とてつもない運命の壁が立ちはだかる。 それは目を細めるほど、太陽の日差しで眩しく銀色に光っていた!
すると、さっきまでの体の震えが止まり、心の奥底から猛烈に激しい怒りが込み上げてくる。
その怒りを抑える為に、大声で叫びたい気持ちを止める為に、力強く拳を握り歯を食いしばった。 倒すべき物より、守るべき者の為に。
機体に掛かるタラップを、運命を噛み締めるように一歩ずつ上り、決意する。 絶対に、このB29をアメリカ艦隊に墜落させてやる……。
B29爆撃機は、原爆と青年の熱い魂の叫びを載せて、運命の場所へと飛び立った。
その頃監視を強めていた時空警察は、B29爆撃機ボックスカーを守るように、監視船が姿を消しながら併走飛行をしていた。
「こちら監視船、テログループの磁気反応はありません。 監視を続けます」
我々と同じ血を引く日本人が、もっと世界に発信し、心に訴えれば人類は滅ばずに済んだのかもしれない。
今この時代の広島と長崎が、核の原点である。
愚かな人間に、そして歴史上世界を牛耳っているアメリカ人に、
広島の原爆投下は核の加害者と思わせ、長崎の原爆をアメリカ人の頭上に落とし、核の被害者と後悔させなければ、時代は動かない。 我々は世界を守る為に、聖戦を歴史に挑んでいる! この野望を踏みにじる者は、全身全霊で排除する。
それがたとえ、未来の私だとしても!」
守は反論する事ができなかった。
「この青年を、どうするつもりだ……?」
「妹を助ける為に、子供たちを守る為に、未来を切り開く為に、自らが歴史を変える運命を選んだのだ」
「それは、本当か……?」
青年は首を、小さく縦に振った。
「君と子供たちの運命は、歴史上すでに決まっている。
歴史を変える事は、不可能に近い程難しい。 だが男は愛する人を守る為に生きている。 試された命で、運命を変えてみろ。 もし失敗した時は、子供たちの所へ連れて行ってやる。 俺は、未来の警察官だ。 最後は俺に任せろ」
「ありがとうございます……。 その時はお願いします」
「優一君。 時間だ。 猶予はない。 核の歴史に案内しよう」
青年は洗脳に屈し、謎の男と時空の歪みに姿を消して行った。
その姿を見送る守は、胸が締め付けられる程複雑な心境であった。 まだ二十歳にも満たない青年が、妹や子供たちを守る為に命を賭ける。 全く経験をしたことのない時空に侵入し、テログループですら成し得ない歴史の変更に挑む!!!
青年の過酷な人生に、自分の人生を重ね合わせた。
そして、時間の止まった仮想空間にいる子供たちを見つめ、時空の扉を悲しそうに開いた。
テログループと青年は、二度目の原爆投下を準備しているアメリカ軍のテニアン島基地に侵入していた。
テログループのリーダーは思考する。 今までのように直接B29に時空侵入するより、時空警察の監視を避け、乗組員に成りすまし、原爆投下を試みる方が成功するのではないか? そして、青年に重要装置を持たせ、乗組員の自由を奪う事を。
運命の日、太陽が眩しくテニアン島基地の滑走路脇を昇る。
刻々とB29爆撃機ボックスカーの離陸時刻が迫っている。
機上準備を終えた最後の乗組員の背後に、テログループの数人が音を立てず忍び寄った。 その瞬間、乗組員は静かに床に倒れ込んだ。 手際よく死体を隠す。 顔のコピーを撮り、青年の顔を変装させる。 光学迷彩での変装は時空警察に探知されてしまう為、偽装マスクでの変装に拘った。
「奇跡を起こさなければ、妹を助ける事はできない。 優一君。 見事、妹を助けてみろ」
青年は何も答えず、目を閉じ集中している。
その青年の顔に、出来上がった偽装マスクを被せ、胸元に重要装置を取り付けた。
「B29が離陸し、暫くすると沖縄に駐留しているアメリカ艦隊の近くを飛行する。 その時に、今から君に渡す指示書を出せ。 その指示に従い行動すれば、明るい未来は開かれる……」
青年は滑走路へと続く、静かな廊下を進む。
足が震える! 一歩一歩の足どりが重い。
今までの人生が蘇り、妹との会話が心に響きこだまする。
薄明かりの向こうに鋼鉄の扉、運命の扉が見える。
謎の男が指差した。
「新しい未来への扉は用意した。 開けるのは、君だ」
妹の為に、重たい鉄の扉に手を掛ける。 目を閉じて、ゆっくりと祈祈った。
「神様がいるなら、力を貸して下さい。 幸子。 絶対に帰る」
けたたましくエンジン音が響く!
決意した先へ、B29に乗り込むために滑走路を歩く。 心臓の鼓動が頭を叩く! 歩く姿を見つめる作業員の視線が怖い。 呼吸が次第に荒くなる。
子供たちの命を奪うB29爆撃機の真下で、悪魔の機体を恐る恐る見上げた。 とてつもない運命の壁が立ちはだかる。 それは目を細めるほど、太陽の日差しで眩しく銀色に光っていた!
すると、さっきまでの体の震えが止まり、心の奥底から猛烈に激しい怒りが込み上げてくる。
その怒りを抑える為に、大声で叫びたい気持ちを止める為に、力強く拳を握り歯を食いしばった。 倒すべき物より、守るべき者の為に。
機体に掛かるタラップを、運命を噛み締めるように一歩ずつ上り、決意する。 絶対に、このB29をアメリカ艦隊に墜落させてやる……。
B29爆撃機は、原爆と青年の熱い魂の叫びを載せて、運命の場所へと飛び立った。
その頃監視を強めていた時空警察は、B29爆撃機ボックスカーを守るように、監視船が姿を消しながら併走飛行をしていた。
「こちら監視船、テログループの磁気反応はありません。 監視を続けます」