君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
どうだろう。

同じ部署で働いて4年になるけれど、新庄さんのプライベートはまったく読めない。

部署の飲み会でも、お金だけ置いて早々と帰ってしまうことが多いし、常にああいう雰囲気なので、そんな無駄話を持ちかけるタイミングがまずないのだ。


忙しさのあまり、プライベートなんて呼べる時間もないのかもしれない。

漫然とそんなことを考えていると、情報通の彩が思い出したように言った。



「秘書課の人とできてたって噂、聞いたことあるよ」

「へえ」



素直に驚きの声が出た。

あの仏頂面で、そんな華やかなところと関係してたのか。



「堀越由夏(ほりこしゆか)ってわかる?」

「冬でもノースリーブの人?」

「それ」



社長印をもらいに行く時くらいしか関わりのない秘書課の中でも、とくに目立っている綺麗な人だ。

抜群のスタイルと、CAかと思うような隙のないヘアメイク。

平たく言うと、がんばりすぎとも表現できる。



「ま、あの秘書さんはほかにも何人か噂あるから、どこまで本当かわかんないけど」


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