君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「新庄さんに嫌がらせしてたの、あんただったの」
「新庄さんに? 違うわよ、この憎ったらしい車にしてたの」
なんだと?
「邪魔なものが多くて、いろいろと」
言いながら、車に向かってミニボストンのバッグをふりかざす。
目を疑った。
車の外装は、びっくりするほどやわらかい。
あんなもので思いきり殴ったら、ちょっと傷がつくくらいじゃ済まない。
とっさに車をかばった結果、バッグに顔面を引っぱたかれる結果になった。
予想外に重い衝撃で、息が詰まる。
「なにが入ってんの、それ…」
彼女は標的を変えたらしく、今度は私にバッグをぶつけてくる。
繰り返し繰り返し。
顔だけはと思って腕で守るけれど、ごてごてとついた金具が、手をすり抜けて顔を殴打するのを感じた。
「そういえば、あなたも邪魔だなって思ってた、我が物顔しちゃって」
──もしかして、私をつけ回してたのも、この人なんだろうか。
あり得ないことじゃない。
始まったのは、ちょうど新庄さんと組んだ頃だ。
そして新庄さんが異動してからは、なにも起こってない。
そう考えると、目の前が真っ赤に染まるくらい腹が立った。
「でも最近は、そう邪魔でもないかな」
「よけいなお世話だよ」
的確に痛いところを突いてくるのが、また頭に来る。