君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「あなたに私を責める権利、ないと思うの。自分が一番でいたい気持ちって、わかるでしょ」
また痛いところを突かれる。
殴られすぎてくらくらしてきた。
ついによけきれず、まともにくらって地面にへたり込む。
それを見た堀越由夏が、やっとバッグを下ろした。
「あなたならわかるでしょ。この車がなければ、もっと私を見てくれるのにって思わない?」
「思わない」
唇を切ったらしい。
鉄の味がする。
服もストッキングもきっとぼろぼろだ、ちくしょう。
「どうして」
「ほんとに好きならねえ」
本気で頭に来ていた。
自分でも驚くくらい、低い声が出る。
「好きな人の大事なものは、一緒に大事にしたくなるんだよ」
「いい子ぶっちゃって」
吐きすてるように言って、堀越由夏が再びバッグを振り上げた。
本能的に顔をかばった。
けど肝心の衝撃がなかなか訪れないので、腕の隙間からこわごわ確認する。
振りかぶった状態のまま、彼女は硬直していた。
視線を追って、私の背後を振り返ると、新庄さんが立っていた。
会っちゃった。
最初に思い浮かんだのがそれで、どこから聞いてたんだろう、というのが二番目だった。
女心は、時ににあきれるほどマイペースだ。
新庄さんは、私たちをじっと眺めた後、車に目をやって、もう一度私たちを見た。その表情は読めない。