君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
あの鬼チーフが、美人秘書と社内恋愛。
なんとなくイメージが湧かなくて、ふうん、とぼんやりした受け応えになった。
「そうだ、これあげる」
彩がバッグからなにかを出してテーブルに置いた。
紺色の地に金色のロゴの入った、細長い小箱。
私の好きなブランドのグロスだ。
雑誌局に勤める彩は、こうしてクライアントからもらったサンプルを、時々おすそわけしてくれる。
「わ、ありがと!」
「いいってことよ、それより新庄さんの情報入ったら、回してね」
「好きだねえ」
「情報を制する者が時代を制するわけよ」
ここのところ、イベントの準備やら雑誌の撮影やらでドタバタしていたおかげで、ゆっくり昼食をとるのも久しぶりだった。
それを取り返すかのごとく、かなりの量を食べて、私は充実した昼休みを終えた。