君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「無神経です、新庄さんは」
「そうなんだろうな」
淡々とした声。
自分の発言に、考えに考えた結果がこれかとあきれたけれど、新庄さんの返事にもあきれた。
「自覚があれば許されるってものでは、ないです」
「…そうなんだろうな」
もう何本目かわからない煙草を、くわえたまま言う。
手はすぐにでも出発できるとでもいうように、ステアに置かれたまま。
こんなのって、ない。
「考えてください、私のこと。なかったことにしないで」
私、声が必死だ。
きっと、めんどくさい女って思われてる。
新庄さんはこんな場面、飽きるほど経験してきてるんだろう。
くわえていた煙草を指に挟むと、細く煙を吐いた。じっと考え込むような間を置いてから言う。
「大塚には、俺じゃない方がいいと思う」
よく意味が飲み込めなかった。
黙っていると、ようやく新庄さんがこちらを見てくれた。
「俺じゃない方が、いいと思う。俺は、大塚を大事にできない」
身体が落ちていくような、宙に浮いているような、不思議な感覚だった。
なんだ、それ。
なんだそれ。
「私のためってことですか」
びっくりするほど冷静な声が出た。
言い訳しているようでもない。
本気で私のためだと言っているんだ。
この男、最低だ。
最低だ、バカ、バカ。