君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「彩と、もっと仲良くしてくださいよ」
「別に俺は、なにもしてない」
「そうですけど」
なにもない部屋の、窓辺に並んで座る。
立てた片膝に置かれた新庄さんの手が、煙草を欲しがっているのがわかる。
でもここでは吸わせない。
新庄さんも、そういうときは絶対に吸わずにいてくれる。
「私には、優しいのに」
「俺は基本、優しい」
じろりと見ると、気づかないふり。
「教えてあげます。優しいだけじゃ、男はだめなんですよ」
新庄さんが、へえ、とおもしろがるような声を出す。
「ちょっと強引だったり、荒っぽかったりが必要なんです」
ただ優しいだけなんて二流。
そんなんで胸を張らないでくださいね。
そういうつもりで言ったんだけど、返ってきたのは予想外の応えだった。
「それは、リクエスト?」
「え?」
戸惑っていると、肩に腕が回ってきて、引き寄せられる。
「期待には、応えないとな」
楽しげにそう言って、新庄さんはリクエスト通りのキスをくれた。