君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
母が心配するのにも、わけがある。


一年ほど前、学生時代からつきあっていた相手と別れたのだ。

実家にも何度かつれていき、家族はもう、時が来れば彼と結婚するとばかり思っていた。

私も、たぶん彼もそう思っていた。


でもなんとなくお互い、そうではないような気がしてきた。

特に険悪になったり、愛情が冷めたりしたわけじゃないんだけれど、なんというか、もうこのまま続けるのはないよね、という流れになって、あっさり終わった。


惰性だったんだと思う。

長く一緒にいると、お互いの考えてることが読めるようになって、テンポも合うようになって、自然、居心地がよくなる。

きっと、それだけだった。


彼と結婚しても問題はなかったと今でも思うけれど、別れた後は、さみしさ半分、解放感半分。

正直なところ、仕事に100パーセント打ちこめるようになって、嬉しくもあった。


楽しくなってきてるしなあ、仕事…。


明日も朝から、クライアントの会社で打ち合わせがある。

私は使ったグラスをざっと洗い、倒れこむようにベッドに入った。



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