君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
ちゃりんと音をたてて小銭が転がる。
「あっ」
しまった。
自販機の前で、散らばったコインを慌てて拾い集めた。
意気込みのとおり、昨日はだいぶ眠った。
だけど月曜からの過酷な日々で、さすがに身体が悲鳴をあげていて、少し寝たくらいでは回復しなかった。
今朝も、なかなか目が覚めきらないので、コーヒーでも飲もうとやって来たところだった。
拾いそびれた硬貨が、コロコロと転がっていく。
100円玉はそのまま給湯室に入り、そこにいた人の靴にこつんとあたって倒れた。
「わ、すみません」
慌てて拾うと、上から声が降ってくる。
「おはよう」
「え?」
流しに腰を預けて、こちらを見おろしているのは、新庄さんだった。
右手に持った紙コップから、コーヒーのいい香りがする。