君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)

ちゃりんと音をたてて小銭が転がる。



「あっ」



しまった。

自販機の前で、散らばったコインを慌てて拾い集めた。


意気込みのとおり、昨日はだいぶ眠った。

だけど月曜からの過酷な日々で、さすがに身体が悲鳴をあげていて、少し寝たくらいでは回復しなかった。

今朝も、なかなか目が覚めきらないので、コーヒーでも飲もうとやって来たところだった。


拾いそびれた硬貨が、コロコロと転がっていく。

100円玉はそのまま給湯室に入り、そこにいた人の靴にこつんとあたって倒れた。



「わ、すみません」



慌てて拾うと、上から声が降ってくる。



「おはよう」

「え?」



流しに腰を預けて、こちらを見おろしているのは、新庄さんだった。

右手に持った紙コップから、コーヒーのいい香りがする。

< 16 / 126 >

この作品をシェア

pagetop