君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「あっ、おはようございます」
言ってから、間抜けに膝をついたままなことに気づき、急いで立ち上がろうとすると、新庄さんが手を差し伸べてくれた。
はい、という感じで、本人もほとんど無意識みたいに。
えっ、ちょっと意外。
そういう紳士的な気づかいをするタイプではないと、勝手に思っていた。
案外、育ちがよかったりして。
そんなことを考えながら、厚意に甘えて引っぱり起こしてもらう。
165センチある私は、ヒールを履くと170センチを楽に越える。
それでも私の目線は新庄さんの顎のあたりだから、たぶん彼は180センチ近くあるだろう。
威圧的なわけだ、とひとりで納得していると、じっと顔を覗き込まれているのに気づいた。
「顔色が悪い」
「え」
「今日のプレゼン、問題ないか」
思わず、まじまじと見返してしまう。
けっこう見てるんだ、この人。
「よく寝ましたし、大丈夫です」
自分に言い聞かせるつもりも半分あって、はっきり答えると、完全には信用していない顔で、そうか? と訊き返されてしまった。