君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
そりゃまあ、くたくただけど、ここまで来て、疲れたのでプレゼンできませんなんてバカな話はない。

大丈夫です、ともう一度言うと、チーフは少し考えるそぶりを見せてから口を開いた。



「この企画、負担は相当だと思うが」



カップに目を落として、言葉を探すように言いよどむ。



「できない人には、俺はここまでやってもらわないから」



静かに言う姿を、ぽかんと見つめた。

疲労で鉛みたいだった身体が、ふと軽くなった気がした。

少しは認めてもらえていると、そう思っていいんだろうか。



「やり遂げたら必ず実績になるし、いい経験にもなる」



彼がこちらを見る。



「頑張ろう」



口元はやっぱり、にこりともしない。

なんだかもう、嬉しいのを通りこして、あきれた。

自分の言葉が、どれだけ人を舞い上がらせているのか、わかってるんだろうか、この鬼は。



「はい」



声に滲んだ喜びに、気づいているのかいないのか、新庄チーフはうなずくと、カップを持ったまま出ていった。



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