君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)

「あの、さっそくなんですが」



若干行き詰まっていたところを相談しようとして、踏みとどまる。

新庄さん、痩せた。

まともに食べる時間もないのか、消費が激しすぎて、食べても追いつかないのか。


ただでさえ人の倍以上働くこの人が、この二週間はさらに激務だったのだ。

疲れがピークに達していても無理はない。



「なに?」



なのに、こうして相談しようとすれば、聞く姿勢を示してくれる。



「…いえ、もう少し考えて、後でご相談します」

「そう? なにかあれば、手遅れにならないうちに言って」



少しほっとした顔をしながらも、そう言って手を差し伸べるのを忘れない。

まあなにかあった場合、尻拭いをするのは彼なので、当然の発言でもあるんだけど。



「はい、基本は順調です。あとはもう作り込むだけですし」



言ってから気づいた。

新庄さんとのコンビは、この企画が軌道に乗るまでだ。

このまま順調にいけば、近々新庄さんは企画から外れることになる。


そっか…。

安心してほしくて言った言葉が、ずしんと重みをもって跳ね返ってきた。


もちろんチームリーダーである以上、関わりはある。

でもパートナーとして一緒に行動することはなくなり、要所で承認をもらったり、定期的に報告をするだけの関係になる。

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