君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「あっ、新庄さんがいる!」
チームの人たちが、どやどやとランチから戻ってきた。
同時に昼休みが終わり、チャイムと共にいっせいに電灯がつく。
よう、と新庄さんが私越しに手を上げた。
「高木の方はもういいんですか? じゃあ僕、ちょっとご相談が」
「大阪から再三お電話ありました。今日いっぱいは不在ということにしておきます?」
「15段広告の提案、持って行くタイミングっていつがいいでしょう」
やっぱり新庄さんがいると活気が違う。
二週間分の穴を埋めたがるみんなのおかげで、新庄さんのデスクの周りは、たちまちにぎやかになった。
はしゃぐみんなの輪から抜けて、私はそっと席に戻った。
今日も、いい具合に疲れた。
オフィスの入っているビルを出て、駅へ向かう。
すでに0時をまわっているけれど、オフィス街だけあって、道行く人の姿はそこそこ多い。
終電までは少し時間がある。
コンビニに寄って、充電のために栄養ドリンクを買っていこうと思い立った。
ありがとうございました、という店員さんの声も消えないうち、さっそく小さな瓶を開ける。
せっかくだから駅までのお供にしようと、歩きながらちびちび飲みはじめた。
ふと細い路地を入ったところにある、コインパーキングの車が目に飛び込んできた。
ミニバンや軽の多い中、ひときわ目を惹く低い車高。
国産の中でもマニアックなメーカーのスポーティセダンだ。