君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
いたずらで傷をつけられたりしたんだろうか。

それならたしかに、深夜の駐車場でこそこそしている私は、さぞ怪しく見えたに違いない。


あれ、てことは?



「あの、この車……」



今さらな問いに、新庄さんはうなずいて応えた。



「俺のだよ」



ええっ!!

思わず大きな声が出た。


よりによって、秀二と同じ車に乗ってるの!?

いや、それはこの際置いといて。


車好きだったのか…。


意外、と言えるほど新庄さんを知っているわけではないけれど、こういうものにお金や愛情をそそぐタイプとは思わなかった。

でもわかってみればたしかに、この車の雰囲気は、彼そのものだ。



「終電とか気にするのが嫌で。遅くなりそうな日は、たまに車で来るんだ」

「なるほど」



会社は重役以外マイカー通勤禁止だ。

だからこんなところに停めてあったんだろう。


どこか言い訳するような口調なのは、さすがに私に悪かったと思っているせいなんだろうか。


ん…?

私、なにか忘れてない?


少しの沈黙の後、ところで、と新庄さんが口を開いた。



「終電、大丈夫か?」




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