君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
なんだ男の影響か、くらいに思ったのかな。


間が持てなくて、新庄さんの横顔を見る。

自分の車だからか、いつもよりリラックスした表情ではあるけど、とくに楽しそうでもない。

私を乗せたこと、後悔してるんだろうか。


なにか、話さなきゃ。

なにがなんでもこの間を埋めなきゃという意識に駆られて、必死に話題を探す。

なかなか思いつかずにいると、新庄さんがまた口を開いた。



「昼間」

「え?」

「なにか相談しかけただろ、俺に。あれ、どうなった」



唐突に、胸がぎゅっと痛んだ。

この人って、どうしてこうなんだろう。



「あの後、本間さんと相談して、結論から言うと解決しました」

「そうか」

「もろもろ、明日ご報告します」

「今日、な」



わざわざ訂正されて、思わず吹き出した。



「そうですね、今日」



たぶん8時間後くらい、その頃にはまたこの人に会える。

会社に行けば、この人がいる。


そう考えるだけで、妙に幸せな気分になった。



「なにかおかしいか」



怪訝そうに聞かれて、顔が笑っていたらしいことに気づく。



「夜のドライブは、ハイになるので」



それで笑っていたわけじゃないけど、嘘じゃない。

意外にも新庄さんは笑い飛ばしたりせず、わかる、と言ってうなずいてくれた。


もうすぐ着いてしまう。

こんな貴重な時間、もうないかもしれないのに。



と思っていたら、案外早く次のチャンスがやって来た。



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