君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「大塚さん、今日の午後って新庄さん捕まるかな、10分でいいんだけど」
「打ち合わせが押さなければ16時には席に戻っている予定ですけど、18時には出て、直帰です」
「じゃあその前に捕まえよう。もし急に空いたりしたら、携帯で僕を呼び出して!」
チームメイトの林田さんが、そう言い残して慌ただしくフロアを出ていく。
「私、新庄さんのマネージャーやってるわけじゃないんですけど!」
背中に言っても届かない。
隣の席で、高木さんがおかしそうに笑っている。
「最近ふたりがいいコンビだからなあ、林田さんの気持ちもわかるよ」
イベント開催まで、残すところ2週間。
大詰め一歩手前というところだ。
いいコンビ。
そう言われるのはおこがましくもあり、うれしくもある。
ただ、それが本当なのか自分ではわからない。
一緒に行動することが増えて、以前よりは息を合わせられるようになったとは、思うけど。
「大塚!」
そこへ新庄さんが、文字通り駆け込んできた。