君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
オレンジ色のライトが照らす、夜の高速。
現在20時、撮影を無事終えた、栃木からの帰り道だ。
結局、行きはなんと1時間半で着いた。
慌ただしく乗り込んだ車の中で事情を聞いたところ、要するに、カメラマンの事故で撮影スケジュールが変わったのだった。
『ゆうべ、小林カメラマンが入院した』
『どうなさったんですか』
『大事はない。ただバイクの事故で肩をやられて、2週間は仕事ができないそうだ』
私たちの部とはおなじみのカメラマンだった。
雑誌からカタログ、こうした単発の案件まで幅広く手がけている。
独特の温かみが売りで、彼の代わりになる人はなかなかいない。
『それで、なるべく作風の近いカメラマンを紹介してくれたんだが』
新庄さんの指が、いらいらとステアを叩く。
『そのカメラマンが明日から海外で、今日しか都合がつかないと』
『なるほど』
明日の撮影準備のため、テストコースは今日から借りきっている。
撮影用の商品なども、午後には搬入される予定だった。
ならば、そのまま今日撮ってしまおうということか。
ものすごい強攻策だけど、たしかにそれがベストだ。
『でもどうして、新庄さんまで』
撮影は私ひとりが立ち会う予定だったはずだ。
『本間さんにも無理を言って、今栃木に向かってもらってる。ついでに先方の宣伝部長も同行すると』
来られないはずだった本間さんの上司が、今日なら来られてしまうのか。
先方が部長連れで、しかも急な予定変更となれば、たしかにこちらも新庄さんが立ち会わないわけにいかない。