君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「あんたすっかりファンだったもんね、ここんとこ」
「ファン?」
昼休み、新庄さんが企画から抜けたことを彩に言うと、朝のへこみの原因はそれか、とずばり言われた。
「ファンか…」
そういうことか、この喪失感と、寂しさは。
「違うの? 完全に惚れ込んでるんだと思ってたけど」
「違わないと思う」
誰だって憧れる。
頭が切れて仕事が速くて正確で、話すことには説得力がある。
働くなら、ああいう人間を目指したいと誰もが願うような人だ。
「ちょっとミステリアスなところが、また探究心をくすぐるよね」
「たしかにね」
彩がもっともなことを言うので、笑ってしまう。
「仕事の人間関係って、結構大事だからさ。恵利のダメージもわかるよ」
「そう言ってもらえると救われる。自分でもこの落ち込みようには若干引いてた」
あはは、と彩が声をたてる。
「同じチームなんだし、また一緒に仕事する機会もあるでしょ。そうへこむことないって
「だね」
せっかく新庄さんが任せてくれた仕事を、こんなふぬけた状態でだめにするわけにはいかない。
気合を入れ直そうとデザートまで頼んで、エネルギーを充填した。