君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
休日ということもあり、彼女は会社で見るよりもカジュアルだった。


ゆったりしたトップスに九分丈のパンツ。

足元はオープントウのパンプス。

野外のイベントにもかかわらず、九センチはあるヒールを履いている。

背中まである髪をゆるく巻き、メイクは完璧。


それに比べて私は、ローヒールのパンプスにパンツスーツ、髪はうしろで束ねているという完全なるイベントスタッフ仕様。


今日に限っては同じ土俵にすら立てていないようで、惨めになる。

別に、立つ必要ないんだけど。



「すみません、今、ブースなんです」

「あら。あの、申し訳ないんですけど、呼んでいただくことできます? ちょっと緊急のご相談で」

「連絡してみます」



物腰はやわらかいのに強引な人だ。

ブースに行けばいいじゃないかと思いつつも、仕方なくシーバーで新庄さんを呼んだ。



『はい、新庄』

「秘書課の堀越さんが、お話ししたいと控え室にいらしてます」

『すぐ戻る』



すぐ戻る、か。

「なんで秘書課が?」って反応は、しないんだな。


とりあえず椅子を勧め、お茶を飲んで待ってもらうことにした。

優雅に座る彼女を、こういうのが好みなのか、と思わず見つめてしまう。

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