君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
ドアの外のふたりの会話は、残念ながら聞こえてこない。
彼女が手をつけなかったお茶を流しに捨てて、お弁当を食べることにした。
やがて新庄さんが控え室に入ってきた。
本当にすぐだ。
堀越さんの姿は見えないから、そのまま帰ったんだろう。
新庄さんは心なしかげんなりした顔で、冷たいお茶をコップにそそいだ。
「悪い、ブースに行けなくなった」
「え?」
向かいの椅子に、乱暴に腰かける。
「常務が、じきにここに来る。プライベートで来てるらしい。アテンドを頼まれた」
「ええ? なんで新庄さんが。せめて管理職がやるべきでしょう」
「課長は会場のことをよく知らないし、ブースの説明もできない。立場上同行してもらうけど、俺も行かざるを得ない」
「それは、たしかに……」
「すまん、それ食ったらすぐブースに出てくれ。入れ違いに俺と課長が抜ける」
「はい」
新庄さんは深いため息をついて、髪をかき上げた。
だけどそういう話なら、最初から課長に持っていくのが筋のはずだ。
どうして堀越さんは、直接新庄さんに頼んだんだろう。
やっぱり…。
「…そういう関係じゃ、ないからな」
私の考えを読んだのか、新庄さんが腕組みをしてこちらをにらんでいる。
「あ、そこまでは聞いてたんですね…」
「課長の言うことなんか、信じるな」
そこまで言わなくても。
彼女が手をつけなかったお茶を流しに捨てて、お弁当を食べることにした。
やがて新庄さんが控え室に入ってきた。
本当にすぐだ。
堀越さんの姿は見えないから、そのまま帰ったんだろう。
新庄さんは心なしかげんなりした顔で、冷たいお茶をコップにそそいだ。
「悪い、ブースに行けなくなった」
「え?」
向かいの椅子に、乱暴に腰かける。
「常務が、じきにここに来る。プライベートで来てるらしい。アテンドを頼まれた」
「ええ? なんで新庄さんが。せめて管理職がやるべきでしょう」
「課長は会場のことをよく知らないし、ブースの説明もできない。立場上同行してもらうけど、俺も行かざるを得ない」
「それは、たしかに……」
「すまん、それ食ったらすぐブースに出てくれ。入れ違いに俺と課長が抜ける」
「はい」
新庄さんは深いため息をついて、髪をかき上げた。
だけどそういう話なら、最初から課長に持っていくのが筋のはずだ。
どうして堀越さんは、直接新庄さんに頼んだんだろう。
やっぱり…。
「…そういう関係じゃ、ないからな」
私の考えを読んだのか、新庄さんが腕組みをしてこちらをにらんでいる。
「あ、そこまでは聞いてたんですね…」
「課長の言うことなんか、信じるな」
そこまで言わなくても。