君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
たぶん、送るって言ってくれる。

そうしたら、どうしよう。

私はどうしたいんだろう。

もう乗らないと思ったのは嘘じゃない。


新しい一面を見つけた気になって、いちいち喜んで。

車の中は私にとって親密すぎて、新庄さんといると、自分に疲れる。


こんなふうに一緒に仕事するのは、今日で本当に終わりなのに。

今さらなにを知ったって、虚しいだけなんじゃないの?


でもだからこそ、もう少し一緒にいたい。

そう思うのは、矛盾だろうか。



「乗ってくだろ、撤収終わったら呼んで」



新庄さんはあっさり言って、離れていく。

ほんと、人の気も知らないで。

どうしよう、と焦りながら、心はとっくに決まっていることに気がついていた。



「ありがとう、ございます」



結局、一緒にいたい。


ねえ彩。

これもファン心理だと思う?



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