君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
やけに静かだ。
目を開けても、辺りは暗くてぼんやりとしか見えない。
私、なにしてたんだっけ。
慌てて身体を起こそうとすると、なにかに阻まれる。
シートベルトだ。
あれっ? 私…。
──寝ちゃったんだ!
一気に目が覚めた。
最低だ!
ふたりきりのドライブで、しかも夜で、新庄さんだって疲れている時に、横で寝るなんて。
運転席を見ると、空っぽ。
エンジンもかかっていない。
ここ、どこだろう。
窓の外は暗く、建物の明かりは見えない。
ドアを開けて車外に出ると、冷たい風が吹きつけた。
焦りでほてった身体にちょうどいい。
車は、河川敷を見下ろす土手に停められていた。
「起きたか」
少し離れたところから声がする。
土手の中腹にあるベンチに座った新庄さんが、こちらを見上げていた。
長い足を組んで、煙草を指に挟んでいる。