君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「新庄さん、すみません!」
必死に頭を下げた。
「別にかまわない」
本当に気にしていないらしく、気持ちよさそうに煙草をくゆらせている。
車に戻る様子がないので、私は土手の階段を下りて、隣に腰かけた。
「疲れてたんだろ」
「新庄さんだってそうでしょう、本当にすみません」
「いいって。俺もさっき少し寝たし」
それは、車の中でふたりして寝てたってこと?
想像すると、思わず顔が熱くなる。
「起こしてくださればよかったのに」
「起こしたんだよ、マンションの前で。でも、起きなかった」
「………」
もう身の置き所がない。
なにやってんだ、私。
「住宅地でエンジンかけとくわけにいかないだろ、だから、ちょっと場所を探してここに出たんだ」
いっこうに起きないから、そのエンジンも切ったけど、と言われて、穴があったら入りたくなった。
時計を見ると、もうたっぷり日付が回っている。
「何時に着いたんですか?」
「一時間半くらい前かな。途中ちょっと渋滞したから」
それなのに、私は隣でぐうぐう寝ていたのか…。