君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
翌朝、定時に出社すると、先に来ていた新庄さんが怪訝そうな顔をした。
大丈夫なのか、と目顔で聞いてくるので、曖昧にうなずく。
結局、あの後は眠れなかった。
明かりを消すのも怖くて、車の中で寝たのをさいわい、寝るのをあきらめた。
「こちらが来場者数の速報です」
プリントアウトを全員に配布する。
「確報と前年比はまだ出ていませんが、見込みで百二十%は確実で、ブース誘導率も八割を超え、来期の継続出展を充分狙えます」
よどみなくしゃべる自分を、どこか遠くに感じる。
自動操縦されているみたいに、身体が勝手に動いてくれる。
定例会が終了した後、一息つきたくて給湯室へ向かった。
流しでカップをすすぎ、紅茶のティーバッグを取り出そうとしたところに、新庄さんが入ってきた。
「大塚、お前、大丈夫なのか」
「えっ」
びっくりした。
いつもどおり振る舞えていると思っていたんだけれど。