君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)

「大塚さん」

「はい」



電話を終えた途端、新庄さんが呼んだ。

少し離れた彼の席に赴くと、嫌な予感がひしひしと迫ってくる。



「来月末のイベント、進めてもらってるところ悪いんだが」

「はい」

「クライアントの要望で、今の企画はいったん中止する」



えっ。

手帳を開いていた手が思わず固まる。



「今週中に、こちらから改案を出す」

「今週中、ですか」

「下案をいくつか出してほしい、そうだな、今日中にでも」



今日中! という言葉はさすがに飲み込んだ。



「先方からの修正希望事項だ。俺の見る限りでは、できない範囲じゃないと思う」



差し出されたA4用紙を受け取る。

簡潔にまとめられた内容を確認した私は、いよいよ貧血を起こすかと思った。


できない範囲じゃない、って…どこがですか。

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