君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
目が覚めると、部屋は真っ暗だった。
枕元の携帯で確かめると、夜の11時。
四時間ほどぐっすり眠っていたらしい。
とりあえず、週末から続いていた身体の疲れは、なんとかとれている気がした。
目が慣れると、カーテンの外から入る街灯の明かりで、少し物が見える。
部屋の中も外も、静まり返って、物音ひとつしない。
ふいに全身が震え出して、びっくりした。
なだめようとしても止まらない。
なんだこれ。
自分の中で、別の自分が叫んでる。
──怖い。
明かりをつけたいけれど、動くと誰かに見つかるんじゃないかという、理屈の通らない恐怖がそれを阻んだ。
そのとき、はっとした。玄関のドアの向こうに人の気配がする。
誰かいる。
息を殺して、音をたてないように携帯を引き寄せて握りしめた。
鍵もチェーンもかけてある。
大丈夫、と自分に言い聞かせる。
耐えがたい間の後、ピンポン、とチャイムが鳴った。