君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「ただでさえ今週はいっぱいいっぱいなのに、この上、提案書か…」
「そんなにきついの」
「いや、それがね」
一転、自分の声がさほど沈鬱でもなくなる。
実は、これが意外となんとかなりそうなのだ。
朝の話があった後、別件の打ち合わせから戻ると、新庄さんからメールが届いていた。
件名なし、本文なし。
愛想ないにもほどがあるだろ、と思いながら開くと、添付ファイルがひとつ。
中を確認したら、出てきたのは過去の提案内容がざくざく貼りつけてある、即席の資料だった。
驚いてデスクの新庄さんを見ると、視線に気づいたのか顔を上げて『参考程度にはなるだろ』と肩をすくめただけだった。
「参考どころか、大助かりの資料でね。それがなかったら、とてもじゃないけどこうしてランチになんか出られなかった」
「聞いてるだけでかっこいいわ」
そもそもが鬼だけど、と彩が悶える。
「独身だよね、結婚の話、聞かないの」
私は、さあ、と首をかしげた。
「鬼すぎて、相手がいないんじゃない」
「仕事の外でも鬼ってこと、ないでしょ」