うな金


そうか。


これが魑魅魍魎というのか。


鰻の残骸が、おぞましく広がっている。


もう一度、ドブに戻る時間はない。


これを、これをなんとか形にしなくては。


それから一時間、めぐみはガンバりました。


夫のため。


息子のため。


娘のため。


私のため。


ガンバりました。


え?なにか二つ抜ける?


気のせいではないでしょうか?


とにもかくにも、年に一度の[うな金]オープンでございます‼


「いらっしゃいませ」


「ただいまー‼」


定時に帰ってきた夫。


鼻をクンクンし、私を見つめ、満面の笑みを浮かべました。


「いらっしゃいませ」


娘が真似る。


「ただいまー‼」


兄を出迎えのだ。


はにかみを浮かべた、ニキビ面の息子。


呼ばなくてもやってきた、舅&姑も、今日ばかりは嬉しそう。


私はみんなの前に一つづつ、並べた。


桶を。








< 15 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop