うな金


一昨年は、奮発して[新王亭]で食べることにした。並で1980円。あり得ないが、仕方がない。明日から、もやしが活躍するだろう。


無期限で。


やってきた小振りの丼。私はソッと優しく蓋を開けると、そこに、お鰻様が寝ておられるではないか。起きておくんなまし、お鰻様‼


鰻とご飯、絶妙なバランスで食べ進め、半分、平らげたところで、緊急事態は発生した。


「あら?もう鰻なくない?」


そう、上に乗ってきる、たった2キレしか、鰻がないではないか。


土用の丑の日だから、きっとお店側も慌てたに違いない。


「あの、ご飯の間に鰻がないんですけど?」


遠慮がちに、だって一年で1番、忙しいのだもの。ここは一歩、引いたつもりだが、無下なく返り討ちにあった。


「2キレだけですけど?」


「へ?」


いやいやいや待って。


丼は、ご飯の中にお鰻様が冬眠しているもの。上に乗ったパリっとした鰻ではなく、ご飯で蒸された、しっとりした鰻の食感を味わうものではないの?


こう、サプラ~イズ的な。


え?で、どうしたって?


あゝ、もちろん追加したわよ。


蒲焼のタレを。




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