カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
だけど、実際に画面に映し出されたのは要じゃなくて、【神宮司匠】。
神宮司さんの着信が数件あることを知らせただけの携帯を、私はソファの下に放った。
喫茶店(ここ)に来た時も、心のどこかで『もしかして』、と思う自分がいて。
でも現実にはここで再会できていない状況だから、なおさらこの電話こそひょっとして――。
妙な緊張感で、私は急いで携帯を探り当てた。
「…………はい」
数秒画面を見つめたあとに、鳴りやまない電話に静かに応答する。
『昨日、大丈夫だった?』
耳元からは、心底心配したような声が聞いて取れた。
「……昨日はずっと寝てて」
『ずっと? 今は? ひとり?』
「今は外で、ひとり、ですけど――――」
『じゃあ行くわ。どこ?』
数十分――ちょうどゆっくりコーヒーを飲み干す頃に、あの入り口から、カラン、と聞こえた。
「……早い」
「ちょうど、この辺にいたりしてーなんて思って。まさか本当に近くにいるとは」
私の隣の椅子を引き、ドサッと腰を下ろすと笑顔で言った。
「運命的なもの、だったりして」
「……ほんと、神宮司さんは口がうまいですよね。ただ、私の担当地域に来てみただけじゃないんですか?」
少し見上げるようにして言った相手は神宮司さん。
あの着信は神宮司さんで――――そういえば昨日も3回は電話してきてたみたいだし、今日も電話が来たっておかしくはないんだけど。
ただ、勝手に私の想像していた人からの電話じゃなかったってだけで。
「それにしても、だ」