カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
目に映る白いシャツと、その袖から覗く腕。
その腕から恐る恐る上へと辿っていくと、心臓が射ぬかれる声がする。
「……お二人で、休日出勤ですか?」
――か……要!
まさか、よりによって鉢合わせをするなんて!
格子の影を顔に受けながら、要は静かに私たちを見る。
逆光のせいで要の表情がイマイチ読み取れないでいると、神宮司さんが、パッと手を離して切り替えた。
「いえ。今日はオフですよ」
「へぇ……そういう間柄で?」
「……それも“今ンとこ”NOで」
神宮司さんが得意の営業スマイルでさらりと言いかわす。
……「今ンとこ」って! それ、わざわざ言わなくてもいいことじゃない。
それになんか、笑顔の裏に……対抗心て言うのかなんなのか……。もう余計なことまで言わないで、早く出てしまえばいいのにっ……。
立ち去りたいのは山々だけど、自分が口を挟めるほど、今の私には勇気がない。
すると、私の心を知ってか知らずか、二人は会話を続け出す。
「本庄さんは、よくこちらに?」
「ええ。自宅からも近いので」
「ああ、そうでしたね。いつかは阿部にお願いして訪問させてしまって」
「その節は失礼しました」
どんどんと、二人の会話が聞くに堪えなくなってきた私は目のやり場に困っていた。
神宮司さんの後ろで、落ち着きなくいた私は、ついちらりと要の顔を見てしまう。
目が合ってしまうとなぜか逸らせなくて、ただ、時間が止まったかのように視線を交わしていた。
瞬きすらも許してくれない気がして――。
私がずっと要を見るように、要も神宮司さんではなくて、奥に立つ私を見据えたまま言った。
「あの日以上に、昨夜は深い眠りについてしまったようで……まだ頭が重くて冴えないのでコーヒーでも、と」