カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
あのあと――すぐに切り返せなかった私に、神宮司さんはそれ以上なにも聞かずに、こうしてドライブに誘いだしてくれたけど。
だけど、『なにも言えない』イコール『なにかあった』って言ってるようなもので、きっと人間観察に優れてる神宮司さんなら、すでにそう察してると思う。
「大丈夫か?」
ぐるぐると、一人そのことに気を取られていると、いつの間にか先を歩いていたはずの神宮司さんの影が動かないのに気付いて足を止めた。
夕陽で出来た長い影。それを辿るようにしていくと、視界には広げられた大きな手が差し出されている。
「……すみません」
「いや」
……だって。だって、こんなふうに差し出されてしまったら、無視できないし。
それに、単純に手助けの意で――――いや、そんなことありえない。
彼は私に告白して、「デート」だと公言したのだから。
この手は厚意以上の手、だ。
それでもこの力強い手を取ってしまった以上、いまさら撥ね退けることはできない。
「これといって、なーんもねぇな」
潮風を浴びて、神宮司さんが目を細めながら笑って海に向かって言う。
支えられながらだと、さっきよりも歩きやすい。
足が砂に埋もれかけて、また足を踏み出す。その様子を自分で見ながら、苦笑して言う。