カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「まぁ、海ですし」
「まだ明るいし、なにするにも人目が気になるしな」
「……神宮司さんのキャラだから、そういうこと言っても憎めないですよね。特権ですよ、それ」
どこにでもいるような、クラスメイトのような男の人。話が上手で、気も遣える大人。
こういう男の人とは、一緒にいても気が楽なのかもしれない。
もう海面は真昼のような色ではなくなってきてる。
……あ。神宮司さんはマリンブルーみたい。
海みたいに広くて大きな心を持ってるような、頼れる存在。そしてあの心を落ち着かせてくれる綺麗な青。
指導してくれてたときは、本当、そんな先輩(そんざい)だったから。
じょじょに赤みを帯びていく太陽に照らされた、神宮司さんの横顔を見る。
やけに光を反射させてる彼の瞳が、私を捕らえた。
「……『キャラ』ね。一体、お前ん中の俺って、どんななの?」
「え……」
「心配すんなって。怒んねーし! ほら」
私の中の、神宮司さん……?
それって、まさに今考えてたようなことなんだろうけど、『マリンブルーです』なんて言われたって意味不明よね。
「……そう、ですね……営業向きな性格とセンス、上司や後輩からも頼られる人柄で……同性からも、明るくてノリがいいので慕われるかと」
「で?」
「……女性関係は……遊んだりはしないけど……楽天的。来るもの拒まずで――決してのめり込んだりしないタイプ」
後半は、言っててなんだか悪い気がしたのと、雰囲気が自分に不利になりそうな気がして小声になってしまった。
ザザッっと波が押し寄せる音が、二人の間に響いてから神宮司さんが口を開く。
「はーん……なるほど」
「あ……すみません。ただの私の想像で、」
「いや、そこそこ合ってるんじゃね?……だから、俺もびっくり」
「?」
「びっくり」した内容が掴めずに、首を傾げて神宮司さんを見上げる。
つい今しがたまで、普段と同じ笑顔と話し方だったのに――。