カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
モノクローム


「阿部さん。これなんですけど、発送した方がいいですか?」


今日も営業先を廻り、カランカラン、と商品(ペン)が足りていないところを補充する。
神野さんが、まだ封をしてない小さなダンボールを指さして言った。


「経理から降りてくる返品伝票待ちなんですけど」
「このくらいの量なら、今日私がこのまま持って帰るわ」
「わかりました。じゃあ、伝票来たら、また声掛けますね」


私にそう告げると、パタパタと忙しそうにバックヤードへと行ってしまった。
裏の在庫棚の足元に置かれてある、そのダンボールを覗き込むようにして屈んだ。


新しいインクや、デザイン変更が目まぐるしくされていくのだから、仕方ないわよね。
こうしてだんだんと、古いものから新しいものに入れ替わっていくんだから。


おもむろに掬い取った数本のペンを、てのひらからコロコロと転がして、ダンボールの中へと戻す。
カシャン、と最後の一本がペンの山に吸い込まれて行ったときに、その間から覗く色に目が奪われた。

目を見開いて、数秒止まる。
それからガシャガシャと、少し乱暴に箱の中を弄(まさぐ)った。


――――うそ。このペンも廃番だったの……?!


色とりどりの軸から見つけたペンの色は――ライトブルー。


数本の同じペンを輪ゴムで束ねられているものを、そっと手にした。
明るく、透き通ったような青(ブルー)。




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