カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

抱えたダンボールをデスクに置き、力なく椅子に座る。
放心していた自分を奮い立たせるように、目の前のパソコンに電源を入れると、キーボードの上に手を置いた。


ガサッ、と箱を開いて取り出したのは返品伝票。
それから適当に手に掴んだものから、伝票との数字や品番が合っているかのチェックを無心で始めた。


何往復かした手に、柔らかい芯の感触が走る。
一度止めた手をゆっくりそのまま持ち上げると、古かったのか、輪ゴムが切れてデスクの上をペンが転がった。


カランカラン、と弾けるようにデスクを跳ねるライトブルー。
キーボードに乗せたままの左手に、寄り添うように転がってくる。


――甘ったるい記憶と手の感触が、同じように弾けて蘇る。


自分の指を見つめて思い返すのは、絡ませ合っていた彼の指。


こんなに明るく澄んだ色が相応しい彼に、いつしか色を失いかけてた私なんかが、一体なにをどうすればいいの……?


――――いまさら、素直になるのが恥ずかしい。


「戻りましたぁ」


止まっていた時間を動かしたのは、外回りから戻った森尾さんの声。

ハッとしてデスクに散らばるペンをかき集めると、気を取り直して、缶コーヒーを口にした。

正面を向いていても、配置上、森尾さんの姿が視界の隅に入る。
ふわっと靡かせた栗色の髪をなるべく見ないように、と、伝票に集中した。




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