カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「それをわざわざ確認しに行ったわけ? だとしたら、本庄さんの驚いた顔が目に浮かぶわ」
「あたしでも、さすがにそこまでしませんよぉ。今の情報はウワサで、土曜は企画に同期がいるんで、ちょっと用事を作ってもらったんです」
「ああ、そう」
「……今、カレ、彼女いないみたい」
私の反応を窺うように、ちらちらと視線を向けては手先を落ち着きなく動かし続ける。
髪をスルッと離すと、今度はストーンのついたラベンダーのネイルをいじりながら言う。
「その、今までの“ウワサ”。共通点ありますよね?」
話し方にも、話の順序にもまわりくどくてイライラしてきた私は、彼女を見ることを止めて、背を向ける。
半分ほど、入力を進めていた画面をみながら冷たく言い放った。
「それが、なに?」
すると、一瞬、間を置いてから、勝ち誇ったような声を出す。
「――可愛くて、若い子ばっかり」
――たとえそうだとしても。
それでも、森尾さん(あなた)になりたいとか、負けたとかはもう思わない。
きっと、あなたはそういう言い方をすることで、少しでもライバルを減らしておきたいところなんでしょうけど。
だって、“今の私”を必要としてもらえなければ、意味がない。
無理をしたり、嘘をついたりしたって、結局はうまくいきやしないんだから。
私の心がわかるはずもない森尾さんは、ここぞとばかりに独り言を演じて攻めてくる。
「あたし、そんなにブサイクじゃないとは思いますしー、歳もまだ20代前半ですし! 条件から入るには問題ない感じですよね」
そりゃあ私だって、ただの女だから、年齢とかそういうことに触れられて、全く平気ってわけじゃない。
面白くない、イライラする。そういう感情はどうしたって防げない。