カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

廃番品の山のダンボールを横目で見る。
自分の気持ちはとっくに気付いてる。それを否定もしない。


だからあとは、その想いに忠実に、素直に行動するだけなのに――。


コツッと近づく足音に、なにをどうしていいのか動揺する。


「な、なにか?」


目線を泳がせて、いつもどおりに言うつもりが逆に少し大きな声になってしまい、あえなく失敗。

神宮司さんはいつものように、後ろから椅子を引っ張って逆向きに跨ると軽く笑って答えた。


「いや? 確認事項をちょっと」
「限定商品のことですか? それなら」
「今週、本庄要がくる予定」


「本庄要」という言葉に、こんなに心が揺らぐなんて。

不意に神宮司さんに顔を向けると、彼は真正面から私を見てこう言った。


「俺、宣戦布告、していい?」


「宣戦布告」……? それって、つまり……。


「そのとき。あいつに」


要に、神宮司さんが「宣戦布告」――。


面と向かってそんなことを言われても、驚きが大きすぎてすぐに言葉なんか出てきやしない。
張りつく喉からようやく声を絞り出して、乾いた笑いで答える。


「いいもなにも……向こうは別になんとも」
「『向こうは』、っつーことは、少なくとも阿部はそうじゃないってことだよな?」


鋭い指摘に本当になにも言えず、口を噤む。

ほら、美雪。前までのあんたなら、きっとサクサクッと言えてたじゃない。

『神宮司さんが宣戦布告したって、私の気持ちは決まってて、簡単には変わりませんよ』って。




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