カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「……きみ、阿部さんとは……」
「あたし、営業部ですから」
「今の話は、どういうこと?」
「ウソじゃないですよ? 関係者から直接聞いた話ですし。要さんて、“美”が好きで、それがこだわりでもあって――とかってインタビューとかに答えてますよねぇ……」
裏はあるとは思ってたけど、予想以上の腹黒さだな……。
やっぱ、オレの人間(ひと)を見る目は当たってる。
すり寄ってくるように、可愛さを出して甘い香りをさせてくるだけの女は、フリーランスで軌道に乗り始めたオレの前に現れることは多くなってきたから。
そんな女性くらいしか出会うことがなくなってきたときに、見つけたんだ。
芯から強く、でも繊細で脆い、美しい女性を。
「それ、無闇に口外しないでほしい」
「……なんでですか?」
「……きみの目的は、なに」
そのことが広まれば、周りは大したことじゃないと捉えたとしても、美雪が傷つく。
それに、神宮司さん(あいつ)にそれを知られたら――……。
まったく悪気がないような顔で、オレの前に立つ彼女は、その質問に首を傾げて考える。
そして人差し指を唇に添えて、数秒後。
「あなたに近付くこと? んー他にも小さなことはあるけど、そんな感じかなぁ」
オレの肩書き目当て、とかそういうとこか。
それと、おそらく、美雪への対抗心も手伝って……というのもあるかもな。
彼女の考えていることを想定していると、部屋から電話の着信音が聞こえてきた。
「電話。いいんですか? 大事な人かも」
挑発的な言い方で、森尾さんはオレの奥へと視線を向けて言う。