カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
エレベーターのボタンを押し、ポケットに手を突っ込んで、階数表示を見上げる。
仕事は仕事。プライベートはまた別のハナシ。
さて……、どうふっかけてやろうか……。
元々、“プライベートでは”めんどくさがりの俺。こういう面倒な状況はなるべく避けてやってきた。
その俺が、わざわざ面倒な道を選んでいってるのは正直自分でも驚きだ。
理由はいくつか考えてみた。
まずは年齢。歳も歳だし、そろそろ俺だって落ち着きたいなぁっていう願望がある。それに相応しそうな相手が、今、手の届くところにいる。
そいつが予想外に可愛くて、俺はあいつのことをほとんど知っていると思っていただけに、いい意味で裏切られた。
ますます気になって、知りたくて、楽しくなった。
そして――。
1階についたエレベーターを降り、ロビーの方へと足を向ける。
正面玄関付近には本庄要の姿がなくて、辺りを見回しながら歩くと、ソファからゆっくりと振り向くやつが目に入った。
さすが早いな。
に、しても、なんでソファに? あれ? あいつの奥に座ってるのって確か……。
「あれ。神宮司さんじゃないですか。こんにちは」
「ああ、ご足労お掛けしまして申し訳ありません。そろそろかと思いまして、ご案内に参りました」
「ははっ。どこかの重役にでもなった気分ですね、それ」
真正面から歩いて来た本庄要に声を掛けられた俺は、普段と変わらない対応で彼を案内する。