カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

好きなことができる喜びと、希望に満ちていたはずの自分の手。
それが、だんだんと黒く、ドロドロと変わっていくのがわかると、自分の手じゃないみたいだった。


『自分らしさ(オリジナル)とかは二の次』


睡眠不足の果て、散々言われて、結局初めに辛口だったものが採用されたり。
出来上がったものは、オレの納得出来ないものばかり。


『こーいうの、“いらない”わけ』


――限界だった。


逃げるように会社を辞め、フリーランスでデザインするようになった。

もちろん初めからうまくなんかいかなかったけど、食器やライト、小さなバーの看板。
今やこうして、大きな文具メーカーまでもが自分に声を掛けてくれる。

有名にならなくてもいい。お金はたくさんなくてもいい。
ただ、自分の好きなものを、誰かと共感して笑顔になって、やりがいを感じたかった。

そのためには、強く、染まらず、自分であることが出来ないとダメなんじゃないかと思って。


――そんな、理想を絵に描いたようなこと。


ずっと胸の奥底に燻(くすぶ)ってた理想。
そんな『理想』が、現実にあったなんて、びっくりだ。


――――美雪。



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