カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
きっと初めてだと思う。
自分と似ていて、でも、それをカバーするように高め合えるような、プラスになる存在。
手元のペンに視線を落として苦笑する。
――プラスに。
前に美雪を呼び出したのは、彼女のイメージをそのまま描きたいと思ったから。あの時はペンがすごく軽く感じるほどに、止まらなかった。
そして現に、美雪を失いかけてる今はどうだろう。
神宮司さんの存在もあって、なにも思い浮かばないだなんて。
「ヤバイな……」
打ち合わせが終わろうとしてる中、ぽつりと漏らしてしまう。
「え?」
「いえ。では、また」
笑顔を浮かべて席を立つと、会釈をした。
神宮司さんの視線に気がついてはいたけど、それに気付かぬフリをして、カバンを持ってカンファレンスルームをあとにした。
エレベーターに向かう廊下を歩きながら考える。
結局、一緒にいて安らげて、力を貰ってたのはオレの方で。
美雪はそれと同じじゃないのかもしれない。
『いらない』。
また、そう言われるのが怖い。
大切なデザイン(もの)だったから、余計に傷が深かったのか。
だから、大事なひとからそう告げられることが、この上なく怖いんだ。
美雪の前であれだけかっこつけといて……。
本当の自分(オレ)は、こんなにも臆病だ。
廊下の途中で足を止めて、焦点の合わないまま、遠くを見つめていた。
ジーンズのポケットから伝わる振動に、姿勢が正され、我に返る。
携帯を取り出すと、そのままエレベーターホールを通り越して歩き進めた。