カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

「じゃあ、確かめに行く」
「……えっ?!」
「本庄要のとこに」


言いながら、神宮司さんの足は既に出口へと動いていて。
慌ててそれを追うように、背中に話しかける。


「彼のせいじゃないですからっ……」


――そう、要じゃなくて、私のせい。
勝手に私が寄り掛かって、勝手に逃げ出して、勝手に距離をおいて……勝手に傷ついた。


「むかつく」
「え?」
「泣かせるくらい、影響力あるあいつが」


体を半分こちらに向けて、低い声で言ったあと、神宮司さんはすぐにまた歩き始める。


……怒ってる? そんな、まさか……。


声を荒げたりとか、そういうのじゃないけれど、先を歩く神宮司さんの背中がなんだかいつもよりも殺気立ってる気がした。

昔指導を受けていたときに、怒られたことなんかなかった気がする。
ミスをしなかったわけじゃないけれど、大きな失敗はなかったし、神宮司さんも優しい人だから、「まぁまぁ。じゃあ、次、気をつけて」っていう感じ。

だから、こういう雰囲気の神宮司さんて本当に初めて見たから、どう声をかければいいのか見当もつかない。

ややしばらく、神宮司さんのあとを追って歩くと、見慣れた景色になってくる。


「あの……本当に……?」


行くんですか……? 要のところに。
一体なにを、どう、しに?


あとひとつ角を曲がれば、あのアトリエの建物が見える。
そこで足を止めた神宮司さんが、きちんと私に向き合った。


< 150 / 206 >

この作品をシェア

pagetop