カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「会いたい? 会いたくない?」
「えっ……」
『要に』っていうこと、よね……。
「会いたい」? 「会いたくない」?
――どっち……?
今度は、絶対に私の答えを聞くまで待つ。そんな神宮司さんの目が見て取れて、懸命に考えて声を絞り出す。
「わ――かりません……」
会いたい、けど、会いたくない……矛盾してるけどそういう感じ。
「俺、思うんだけど」
すっかり暗くなった空の下、見上げる神宮司さんの顔は真率な表情。
そして、その勝気な一重まぶたが私の心を見透かしている気がして動けない。
「会ってる時間より、会わない時間の方が、相手を想う気持ちって強くなるんじゃないかって」
「……会わない時間……」
きっと、そう。
このまま会わなくたって、要のことを忘れて行くどころか、簡単に頭から離れない。
そうして美化したり、執着したり……つまり、想い続けてることになる。
「俺、計算高い男だからさ。そういう、少しでも不利になりそうなのは、早めに対処するよ?」
片眉を上げて、突然、突き放すような言い方をする。
「その曖昧な答えが、有利になるように」
賭け――てるのかもしれない。
神宮司さんの立場だったなら、今が攻めどきだ、って私でも計算しそうだ。
探るように神宮司さんの顔を、じっ、と見つめる。
すると、「ふっ」と、今度は眉尻を下げて優しく笑った。
「――なんて。俺、まだそこまで自信ねぇけどな」
自嘲気味に笑って、神宮司さんは胸ポケットからタバコを取り出す。
骨ばった形のいい指に一本挟めると、それを咥えて視線を落とした。そしてまた、指にタバコを戻し挟めると、ばつが悪そうに言う。