カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
ボトルグリーン
*
どんなときも、どんなに打ちのめされても。
仕事があるというのは、ときに酷でときに救いだ。
週末の金曜は週明けの月曜の次くらいに忙しい。
その忙しさに救われる人は、きっと世の中で私だけじゃないはず。
少しの休憩も挟まずに、次から次へと営業先をまわる。
ちょうどお昼をまわったときに、足を踏み入れたのは弐國堂。
そこでも無心になって、品出しや発注書を抱えて店内を歩く。
「あ。こんにちは、お疲れ様です」
背中に掛けられた声に、どこかほっとして一息つくように振り向いた。
「お昼は終わったんですか?」
「いえ……まだ」
「そうなんですか? いいんですか?」
「ええ。暑さのせいか、あまり食欲もないから」
適当なことを言いながら手元を動かし続けると、私の横に並んで、神野さんも在庫を確認していた。
「確かに、毎日暑いですよね。私も毎晩、寝苦しいですもん」
私の寝られない理由は、今やそれだけじゃない。
なんて、そんなこと口が裂けても言えない。
「不思議ですけど、やっぱり涼しげな色を見ると、少し気が紛れます」
何気なく言った神野さんの言葉に、今の私が瞬時に思い描く色。
「こういう、グリーンとか、ライトブルーとか」
昨日、“もう忘れて、以前の自分に戻ろう”と決めたのに。
「あ……そういえば」
「え?」
神野さんがなにか言いかけたところで、ポケットの中の携帯が音を上げた。
着信が電話だと悟った神野さんは、ニコッと目で合図をして、その場から去ってしまった。
ディスプレイを確認して、電話をとる。
どんなときも、どんなに打ちのめされても。
仕事があるというのは、ときに酷でときに救いだ。
週末の金曜は週明けの月曜の次くらいに忙しい。
その忙しさに救われる人は、きっと世の中で私だけじゃないはず。
少しの休憩も挟まずに、次から次へと営業先をまわる。
ちょうどお昼をまわったときに、足を踏み入れたのは弐國堂。
そこでも無心になって、品出しや発注書を抱えて店内を歩く。
「あ。こんにちは、お疲れ様です」
背中に掛けられた声に、どこかほっとして一息つくように振り向いた。
「お昼は終わったんですか?」
「いえ……まだ」
「そうなんですか? いいんですか?」
「ええ。暑さのせいか、あまり食欲もないから」
適当なことを言いながら手元を動かし続けると、私の横に並んで、神野さんも在庫を確認していた。
「確かに、毎日暑いですよね。私も毎晩、寝苦しいですもん」
私の寝られない理由は、今やそれだけじゃない。
なんて、そんなこと口が裂けても言えない。
「不思議ですけど、やっぱり涼しげな色を見ると、少し気が紛れます」
何気なく言った神野さんの言葉に、今の私が瞬時に思い描く色。
「こういう、グリーンとか、ライトブルーとか」
昨日、“もう忘れて、以前の自分に戻ろう”と決めたのに。
「あ……そういえば」
「え?」
神野さんがなにか言いかけたところで、ポケットの中の携帯が音を上げた。
着信が電話だと悟った神野さんは、ニコッと目で合図をして、その場から去ってしまった。
ディスプレイを確認して、電話をとる。