カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「じっ神宮司さん……! こんなとこ……!」
「ん? たまにいーんじゃない。美味い酒と料理。悪酔いはしないと思うけど?」
そーいう問題じゃなくて!
ふ、と、夜景が見下ろせる大きな窓を見た。
そして、そこに映し出される自分。
「阿部ってさ。厳しいじゃん?」
神宮司さんの声に、顔を元に戻す。
だけど、彼は私じゃなくて、さっきまでの私と同じように夜景を瞳に映してた。
「他人にも自分にも。だからいつもそんな、背筋ピンとしてんのかな」
いつの間にか、その大きなガラス越しに私を見ていた神宮司さんと、無数の光が散らばる中で目を合わせる。
「俺には真似出来ないけどな。だからかも。なんか見てて“気持ちいい”って思う」
こういう雰囲気のせいなのかな。ドキドキとしてしまうのは。
女の子は誰だって、夢のようなシチュエーションを一度は思うはずで。それが現実に起こると、どんなにベタなことだとわかっても、こうやってドキリとする効果はやっぱりあるらしい。
なんとなく、こういう洒落た場所と、滅多に言われもしない言葉にドギマギしながら、そのまま運ばれてきたものを順に口にして行った。
私たちは学生の頃の思い出話や仕事なんかの他愛ない話をして、お酒も美味しく飲み交わしていた。
そして、デザートのお皿も描かれたようなソースだけが残った頃に、気付けば神宮司さんが一定のリズムで指を打っていた。
あ――――。